ピロリ菌はペットに感染するのか
「ピロリ菌は他の動物にもいるのでしょうか?飼っている動物からうつることはないでしょうか?」という疑問はみなさんもたれると思います。答えは「ピロリ菌はヒトの胃の粘液細胞から出る粘液を唯一の食物(栄養源)としている細菌で、他の動物には感染しないとされている」ということになります。
(ブルーバックス ヘリコバクター・ピロリ菌 緒方卓郎・著 より引用)
2016年2月に開催された日本獣医内科学アカデミー学会で、飼い主と同じ型のピロリ菌が飼っている2頭の犬からみつかった。
そこで飼い主が2頭の犬にピロリ菌に感染させたのではないか、また犬でもピロリ菌に感染することで潰瘍や胃炎を起こすと思われる、と発表された。
とうぜん感染した犬は、他の犬や人間にもうつす可能性がある。
またヒトには感染しないが、ピロリ菌の仲間のヘリコバクター属の細菌は、犬、猫、豚、イタチ、猿など多数の動物にみつかっている。
ヘリコバクター・フェリスはピロリ菌によく似た仲間の細菌で、猫などの胃にみられる。ヘリコバクター・フェリスはマウスの胃に感染させることができるので、ワクチンをつくるための研究に使われている。フェリスをマウスの胃に感染させると、急性胃炎をおこし慢性萎縮性胃炎に移行する。
【感染とは】
口などから菌が身体に侵入しても通過しただけでは感染といわない。
身体に菌が侵入し、胃や腸などに定着・増殖し、症状(障害)がでることを感染という。
【人獣共通感染症】
人間に感染する病原体は1700種類以上が知られている。そのうちの約半分以上が人間と動物の種を超える共通感染症だ。
WHO(世界保健機構)が重要としている疾患は100以上あり、疾患数は年々増える。毎年のように新たな疾患が発見されている。
>>犬から感染することがあるおもな感染症
・パスツレラ症
・カプノサイトファーガ症
・犬ブルセラ症
・カンピロバクター症
・エルシニア症
・レプトスピラ症
・Q熱
・狂犬病
・皮膚糸状菌症
・エキノコックス症
・ウリザネ条虫症
・犬糸状虫症
・犬回虫症
・犬鉤虫症
・東洋眼虫症
・ジアルジア症
・疥癬
>>猫から感染する可能性のあるおもな共通感染症
・サルモネラ症
・パスツレラ症
・エルシニア症
・猫ひっかき病
・Q熱
・皮膚糸状菌症
・クリプトコックス症
・トキソプラズマ症
・クリプトスポリジウム
・ジアルジア症
・回虫幼虫移行症
・疥癬
【人からペットへの感染経路】
ピロリ菌の感染は、口から入ってくると考えられている。いわゆる経口感染だ。
複数の研究調査によれば、胃にピロリ菌がいる人で、唾液や歯垢にも菌がいる人の割合は、約40パーセントと報告されている。ゲップをすれば、胃の中のピロリ菌が口にまでのぼってくる可能性もある。
口に菌がいる状態でペットとキスをする、口移しで食べ物を与える、糞便を触った手を洗わない、顔を舐めさせると感染する、感染させてしまうかもしれない。
【ヘリコバクター・ハイルマニイ菌】
人とペットの共通感染症にピロリ菌の仲間のヘリコバクター・ハイルマニイ菌がある。ハイルマニイ菌はピロリ菌よりも感染力が強く、発がん性もピロリ菌の7倍といわれる。
ペットの飼い主がハイルマニイ菌に感染している場合もあり、ピロリ菌の除菌に成功しても油断は禁物だ。
【ペットからの感染を防ぐ方法】
ペットからの感染を防ぐ基本的な対策は、手をしっかりと洗うこと。うがいをすること。清潔を習慣づけよう。
手洗いはせっけんがあれば使う。せっけんがない場合は、水だけで洗うことになるがせっけんをつけて洗う時と同じくらいにしっかりと洗おう。たまに手を濡らすだけといった手抜きな人がいるが、それでは洗ったことにはならない。
そして手を洗ったら清潔でキレイなタオルで手を拭く。汚れたタオルでは逆に手を汚染してしまうことがある。学校や会社など、公共の場所にあり不特定多数の人が使うタオルは使わない。自分専用の清潔なタオルをもっていくこと。
犬や猫のトイレは、こまめに掃除して清潔に保つ。またトイレを掃除したとき、糞便を触ってしまい手指についた菌や回虫の幼虫が口から入ることもある。ペットを抱いたりなでたり触った時、食事やおやつの前は必ず手をしっかり洗う。これだけで予防効果はたしかだ。
犬や猫を飼うときは動物病院で病気の検査をする。予防できるものは事前に予防しておく。もちろん飼ってからも定期的に健康診断を受けさせる。
猫のほぼ100%、犬の75%がパスツレラ菌をもっている。パスツレラ症は、ペットに手足、顔、頭などを咬まれたり、引っかかれてうつる病気だ。傷が腫れて化膿する。肺炎になる場合もある。
>>日本の小児科におけるパスツレラ症の報告状況
・子宮内胎児死亡
・髄膜炎
・敗血症
・腹膜炎
・全眼球炎
・猫咬傷
・大腿内側基部蜂巣炎
・犬咬傷
・副鼻腔炎
【ペットへの感染を防ぐ方法】
ペットへの感染を防ぐ方法の基本は、ペットとの過剰な接触を避ける。
具体的に以下の6つに気をつけたい。
・顔を自由になめさせない
・ペットとキスをしない
・口移しで食べ物を与えない
・人間の箸や食器で食べ物を与えない
・一緒に寝ない
・台所や食卓にペットをいれない
【ピロリ菌の感染する動物と実験結果】
人間のピロリ菌を動物に感染させることで、病気の経過、ワクチン、治療法の開発など多くの情報を得ることができる。そのため多くの動物が実験に使われている。
>>サル
ニホンザル、アカゲザル、カニクイザルなどの人間に近いサルには感染させることができる。サルに感染すると、人間と同様に急性胃炎がおきて慢性胃炎になり、菌も居座る。
>>スナネズミ
ピロリ菌の培養液を口からチューブを使って胃の中に流し込み感染させる。急性胃炎をおこし、半年後には3匹のうち2匹に潰瘍が発生した。また胃の粘膜の中に腸の細胞ができる腸上皮化生も発生した。
>>マウス
マウスも感染直後は急性胃炎をおこし、8か月後には慢性胃炎に移行した。
なおマウスの胃には多数の乳酸菌が定住している。マウスは胃酸が弱いため胃に乳酸菌が住み着き餌や空間を独占する。そのため違った細菌が入って来ても追い出すと考えられている。
LG21乳酸菌ヨーグルトの開発秘話で、実験に使うマウスに大量のピロリ菌を飲ませても胃に定着せず、感染しなかったを紹介した。
ところが、体の中に腸内細菌を含めてまったく細菌のいない「無菌マウス」に同じピロリ菌を飲ませたところ、容易に感染が成立している。
>>無菌ミニブタ
感染すると胃炎がおこる。なかには潰瘍になるものもいる。
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