ホップポリフェノールがピロリ菌による疾病発症リスクを低減する
アサヒビールの未来技術研究所と千葉大学大学院医学研究院・野田公俊教授の研究グループは、今回、培養細胞及び動物試験において、ホップポリフェノールがヘリコバクター・ピロリ菌の産出する空胞化毒素(VacA)の毒性を強力に中和・無毒化する効果を有することを、確認しました。
(出典 アサヒグループホールディングス 研究開発・研究レポート)
ホップはヨーロッパでは古くより民間薬として用いられてきました。女性ホルモン様作用を持つ物質が含まれることから、更年期の症状を軽減することが知られており、サプリメントとして販売されています。また、生薬としても健胃、鎮静、利尿作用があるとされています。(中略)ホップを(ラットに)経口投与した結果、胃液の分泌が2倍以上に増加する結果がでています。
(講談社・ブルーバックス 渡淳二監修 ビールの科学 麦とホップが生み出すおいしさの秘密 より引用)
【ホップとは】
ホップはアサ科の植物で日本では「カラハナソウ」と呼ばれる。
ビールの原料として使われるのは、ホップの受粉前の雌株が持つ毬花(きゅうか)のみ。ホップはビール醸造のためにのみ生産されているといっても過言ではない。
現在もドイツで守られている法律に「ビールは大麦、ホップ、および水だけを使って醸造せよ」というものがある。いわゆる純粋令だ。
ホップは大きくわけて3種類に分けられる。
・ファインアロマホップ 最高級のホップで香りがもっとも高貴で苦みも上品
・アロマホップ 香りはファインアロマホップより強く、苦みの質もよい
・ビターホップ 香りよりも苦み成分を重視している
どのホップを使うか、またはブレンドするか、いつ添加するかによってビールの香味が大きく変化する。生産者はホップの使用に独自のノウハウをもっている。
【なぜビールにホップを入れるのか】
なぜホップをビールに入れるのか。それはホップの持つ壮快な苦みと、精油による爽やかな香りがビールになくてはならないものだからだ。
ほかの理由として、ホップにはアルコール度数が低く腐りやすいビールの醸造時の雑菌の繁殖を防ぐ力があること、麦汁の清澄化作用による混濁防止で保存性を高めること、人体への安全性などがあげられる。
またホップを入れることで白い泡が立つようになった。この泡はフタをするようにグラスを覆い、炭酸ガスを逃さないのでビールの清涼感を長く保つことができる。
苦みはビールの味を引き締める効果もある。人間は飲食することで栄養が満たされても、単調な味の食事を続けているとちがったものが食べたくなる。さらに継続して食べることで苦みを好きになる。これは実験でも確認されている。だから子供のころは苦手だったブラックコーヒーやピーマンといった苦みのある食品が、大人になると美味しいと感じたりする。
ホップは大麦、水と並んでビール原料に不可欠な存在となった。ビール純粋令以来、世界ではホップを使わないビールは「ビール」と呼ぶことが許されていない。
【ビールの効能】
ビールは古代エジプトでは「液体のパン」と呼ばれるほどバランスよく栄養素が含まれている。ゆえに流行病の予防や治療薬として用いられてきた。イギリスの黒ビールに卵を混ぜたエッグスタウトは風邪に効く薬として使われている。
すでに何千年、何百年と人間に飲用されており、安全性も確立されているといっていいだろう。
ビールの栄養学的な特徴は4つ。
・ビタミンやミネラルがバランスよく含まれている
・栄養分がコロイド状で吸収されやすい状態になっている
・炭酸ガスやホップは消化管を刺激して栄養分の吸収を促す
・アルコールには血液の循環を活発にする作用がある
ちなみにビールのカロリーのほとんどはアルコール分で、大びん1本(633ml)あたり約250キロカロリーになる。
>>脚気の防止
コロンブスの大航海時代、船にはビールが積み込まれていた。これはビタミンB1が不足することによって起こる脚気の防止のためだ。ビールには水溶性のビタミンが豊富に含まれている。
>>動脈硬化の防止
アルコールは血液の循環を活発にする作用がある。ビールのアルコールは低濃度であり、さらにナトリウム塩の含有量も低い。また高血圧を抑制し、血液の循環も促進する作用がある。
>>不眠解消作用
チェコの農民はホップを詰めた枕を使っている。ホップに含まれる成分のルプロンには沈静作用がある。ホップには食欲増進作用、入眠・安眠作用があり、ドイツでは入浴剤として利用されている。
ほかにも胃の働きを活発にする、鉄の吸収を促進、消化器潰瘍を抑制、耐糖性を改善、胆のうの働きを促進、便秘防止、ストレス解消、利尿作用、女性ホルモンの上昇、アレルギーの防止作用などが認められている。
【ポリフェノールの効果について】
赤ワインやビールのホップ、チョコレート(カカオ)には、ファイトケミカルの一種であるポリフェノールが含まれている。
ファイトケミカルとは植物に含まれている化学成分を指し、ファイトケミカルは人間の体内に入っても同じような働きをする。
もともと一定の場所から動くことができない植物は、常に雨風や強い太陽の光線にさらされている。毒をもった害虫にもたかられる。そんな外界の攻撃から身を守るために植物は体内に化学物質をつくる。
人間の体は活性酸素による酸化によって老化する。そこで体内の抗酸化作用を補うために、野菜や果物からファイトケミカルを摂取しよう。